肺炎球菌感染症について
肺炎球菌感染症は、「肺炎球菌」という細菌の感染によって引き起こされる病気です。この「肺炎球菌」は、無症状のまま人の鼻やのどに定着していること(保菌)が多く誰にでも感染リスクがあり、免疫力が低下した時などをきっかけに、肺炎、敗血症、髄膜炎、中耳炎などの重篤な感染症を引き起こすことがあります。
特に日本人の死因第3位の「肺炎」の最大の原因菌は、成人の1/4~1/3が肺炎球菌が原因と考えられています。
また、血液や髄液など本来無菌であるべきはずの領域から肺炎球菌が検出される侵襲性肺炎球菌感染症(Invasive Pneumococcal Disease: IPD)と呼ばれる重症感染症は、1歳以下や50歳以上で多く報告されており命に関わる危険性があります。
肺炎球菌は、1歳児の3%~50%(保育施設園児の80%以上)、成人の3%~5%が保菌していると報告されており、気道の分泌物や唾液などを通じて飛沫感染するため、侵襲性肺炎球菌感染症(Invasive Pneumococcal Disease: IPD)の予防を目的に小児の肺炎球菌ワクチンの接種が行われています。また、近年では抗生物質が効きにくい耐性菌も増加しており、ワクチンによる予防が非常に重要とされています。
肺炎球菌ワクチンについて
肺炎球菌ワクチンは、肺炎球菌感染症を予防するためのワクチンです。このワクチンを接種することで、体内で病原菌に対する免疫(抗体)が作られ、特に重症化しやすい病気(肺炎、髄膜炎、敗血症など)の発症を防いだり、重症度を軽減したりする効果が期待できます。
現在、日本国内で主に使われているワクチンは、大きく分けて『結合型ワクチン (PCV)』『多糖体ワクチン (PPSV)』の2種類があります。
当クリニックでは、以下の肺炎球菌ワクチンを取り扱っております。
- ニューモバックス®NP:8,200円
- プレベナー20®:11,000円
- キャップバックス®:14,000円
| 製品名 | ニューモバックス®NP | プレベナー20® | キャップバックス® |
|---|---|---|---|
| 種類 (価数) | 23価 (PPSV23) | 20価 (PCV20) | 21価 (PCV21) |
| ワクチンの分類 | 多糖体ワクチン (PPSV) | 結合型ワクチン (PCV) | 結合型ワクチン (PCV) |
| 主な対象者 | 高齢者(65歳以上の定期接種対象者) | 小児・成人(任意接種) | 成人(18歳以上、任意接種) |
| 免疫の特徴 | カバー範囲が広いが、免疫の記憶がつきにくく、抗体価の持続が比較的短い(約5年) | 免疫記憶を誘導し、長期的な免疫持続が期待できる | 免疫記憶を誘導し、長期的な免疫持続が期待できる。成人のIPDの原因型を広くカバー |
| 接種回数・間隔 | 単回接種(原則)。定期接種では5年ごとに再接種が必要な場合がある | 1回接種で完了 | 1回接種で完了 |
| 公費(補助金) | 定期接種の対象(65歳など特定の年齢) | 任意接種(自費) | 任意接種(自費) |
どちらのワクチンも、重症の肺炎球菌感染症に対して高い予防効果が期待できます。それぞれの特徴があり単純に比較することは出来ません。どのワクチンがよりご自身の状況に適しているかを考えることが大切です。
まずは、お気軽ご相談ください。
肺炎球菌感染症の治療について
肺炎球菌感染症の治療は、主にペニシリン系の抗菌薬(抗生物質)を用いて行わることが多く、通常は内服薬で治療しますが重症の場合は点滴で治療されることもあり、症状の重さや感染した部位、そして耐性菌の有無によって、使用する薬や治療方針が大きく異なります。また、近年、ペニシリンに対する耐性をもつペニシリン耐性肺炎球菌(Penicillin-Resistant Streptococcus Pneumoniae: PRSP)が増加しつつあり、治療抵抗例・重症化例が問題となっています。
