女性と瘀血(おけつ)⑦

前回(第6回)で日常のセルフケアや食養生について触れ、今回は「東洋医学的な診察」についてご紹介していきます。専門用語で難しくなりすぎないよう「漢方医って診察室でどんなところを見ているの?」という観点からご紹介できればと思いますので、少しでも興味を感じられれば、よろしければご一読ください。

前回までは、瘀血のメカニズムやセルフケアについてご紹介してきました。「一度診察を受けてみたいけれど、漢方内科ってどんな診察をするの?」と疑問に思われている方も多いのではないでしょうか。
西洋医学の診察では、血液検査や画像検査などの「数値やデータ」を重視しますが、東洋医学では五感(見る・聞く・問う・触れる)をフルに使って、全身の「気・血・水」の巡り具合を探る診察を行います。これを「四診(ししん)」と呼びます。
当クリニックでは、状況に応じて西洋医学、東洋医学の両方からのアプローチを行っていますが、今回のブログでは、冒頭でも触れていますように東洋医学的観点で診察室に入った瞬間から医師が何を見ているのか、その「東洋医学ならではの視点」を解説します。

漢方内科の診察室では、お身体から発せられる小さなサインをていねいに拾い集めていきます。

  • 望診(ぼうしん):見る診察
    顔色、皮膚のツヤ、目つき、爪の色、立ち振る舞い、そして「舌(舌診)」を観察します。
  • 聞診(ぶんしん):聴く・嗅ぐ診察
    声のトーンや大きさ、話し方、呼吸の音などを観察します。
  • 問診(もんしん):問う診察
    主訴だけでなく、寒がりか暑がりか、睡眠、お通じ、生理の状態、メンタルの波などを詳しく伺います。
  • 切診(せっしん):触れる診察
    手首の脈に触れる「脈診(みゃくしん)」や、直接お腹を押さえる「腹診(ふくしん)」を行います。

では、実際に「瘀血(血の滞り)」があるかどうかを診る際、どのようなポイントに注目しているのでしょうか。患者様ご自身でもチェックできる代表的な例をご紹介します。

手首の血管に指を添え、血流の勢いや血管の硬さ、リズムを診ます。

血がスムーズに巡っていないと、お肌の微細な血管にも影響が出ます。

  • 渋脈(じゅうみゃく): ザーザーと流れる清流ではなく、ギザギザとひっかかるような「スムーズさのない不規則な打たれ方」をします(ドロドロ血の典型的な脈です)。
  • 弦脈(げんみゃく): ギターの弦をピンと張ったように硬く触れる脈で、ストレスや緊張によって血流がぎゅっと縮こまっている状態を示します。

東洋医学では、「舌は内臓の鏡」と言われます。舌を見るだけで、体内の血流状態が手に取るように分かります。

  • 舌全体の色が紫色っぽい、または舌の表面に暗いポツポツ(瘀斑:おはん)がある
  • 舌を裏返した時、2本の静脈が太く浮き出ていたり、黒っぽく蛇行したりしている(瘀血の非常に分かりやすいサインです)

ベッドに横になっていただき、お腹を優しく押さえて診断します。

  • おへその下(下腹部)や、その左右を押さえると「痛む(圧痛)」「コリコリとした硬さがある」
  • お腹の底が冷えている

血がスムーズに巡っていないと、お肌の微細な血管にも影響が出ます。

  • 目の下に青黒い「くま」ができやすい
  • 顔色が少し暗い(くすんでいる)、唇や歯茎の色が暗い紫色をしている
  • 小鼻の脇や頬に細かい赤糸状の毛細血管が浮き出ている

漢方の診察は、いわば「身体が発している無言のメッセージを通訳する作業」です。
「検査結果では『異常なし』と言われたけれど、どうしても体がだるい、生理痛が辛い……」という場合でも、お顔立ちや舌、お腹、そして脈の打ち方にしっかりと不調の原因(瘀血)が現れていることがよくあります。
当クリニックでは、お話を聞くことと同じくらい、お身体のサインを丁寧に観察することを大切にしています。診察室ではリラックスして、どうぞそのままのあなたでお越しくださいね。
次回(第8回)は、今回少しご紹介した診察法の中から、特にご自身でも簡単にチェックできる「『舌』と『お腹』から分かる瘀血のサイン」をさらに深掘りして解説していきます